はじめに|パフォーマンスを上げたいダンサーへ

「ストレッチはしているのに足が上がらない・開かない」
「左右で上げやすさが違う」
「もも裏が常に張っている感じがする」
これは多くのダンサー、バレエダンサーが抱えている共通の悩みです。
これらの原因はハムストリングス(もも裏)の硬さだと思われがちですが、実際にはそれだけでは説明できないケースが多くあります。
今回は、その改善方法をいくつかのポイントに絞って紹介していきます!
1.【最重要】足の運動と骨盤の関係性
もも前(大腿直筋)やもも裏(ハムストリングス)は、骨盤に付着しています。
大腿直筋が働くと骨盤は前方向に引っ張られ、ハムストリングスが働くと骨盤は後方向に引っ張られます。

もも前を使い過ぎることによって骨盤が前傾方向に引っ張られて反り腰になる可能性もあれば
インナーマッスルの不活性や産後の影響で骨盤の変位が起きてしまって、もも前 or もも裏が張ってる状態になる可能性もあります。
つまり、筋肉そのものにフォーカスする「ストレッチ」だけでは改善しないケースも多く
姿勢不良、体幹筋群の不活性、横隔膜の左右差…etc
様々な要因に目を向ける必要があります。
↑↑とはいえストレッチも可動域向上には有効なので、こちらも参考にしてみてください!
2. 反り腰(骨盤前傾)だとなぜ足が上がらないのか
ダンサー「もも前が常に張ってるんです」
このような相談ケースは多くあります。
ヒールを履いたり腰を反らせるような姿勢でいると、このような姿勢が続きます。

骨盤が過度に前傾すると、坐骨結節は上方に移動し、ハムストリングスは常に軽く引き伸ばされた状態になります。
この状態では、常にハムストリングスが伸張されているポジションにあり
動かせる余地が残っていないのが問題となります。

骨盤前傾は悪ではない
誤解されがちですが、骨盤前傾そのものが悪いわけではありません。
問題になるのは、
- 骨盤前傾位で固定されること
- 動きの選択肢が減ってしまうこと
骨盤が前傾も後傾もでき、動作に応じて自然に使い分けられることが、結果として足の上がりやすさにつながります。
更に、大事なのが…
骨盤は左右独立して動くということ
どちらかの骨盤の動きが悪いと、動きが悪い方の骨盤は自由を失われ
足の上げやすさ・開きやすさに左右差が生まれます。
以下に、簡易的な評価方法を紹介します。
Gillet Test(ジレテスト)
①被検者は両脚⽴位とし、検者は後⽅から⽴脚側の第⼆仙⾻棘突起、および屈曲する側のPSIS を触れる。
②被検者は PSIS を触れられている側の股関節を90°屈曲する。
③正常なうなずき運動では、屈曲側の指は下⽅に移動する。うなずき運動が発⽣しない場合、屈曲側の指は上⽅に移動する。

左側の骨盤帯の可動性が失われ
- 左側のハムストリングスの柔軟性低下
- 左側の腰痛
これらが発生しているダンサーが多くいる印象です。
3. 筋紡錘の感作による「危険信号」
筋肉の中には筋紡錘と呼ばれる、筋の長さ変化を感知するセンサーがあります。
このセンサーは、筋が急激に引き伸ばされそうになると反射的に働き、筋を守る役割を担っています。
※ゆっくり動かすと痛くないが、勢いよく動かすと筋の張り感が出現
しかし、ハムストリングスが常に軽度伸張位に置かれた状態が続くと、筋紡錘は繰り返し刺激による神経応答が増大(感作)状態になります。
すると、
- 脳・脊髄レベルでの興奮性増大
- 危険評価(threat appraisal)の過剰化
- 運動指令と痛覚処理の結合
つまり、筋肉そのものが硬くなっているのではなく「動かすと危険だと判断」されているため
“動かしたくない=硬くなる”という反応が起こります。
そのため、「動いても危険ではない」という動作の再構築を、「安全な刺激の反復入力」によって学習していく必要があるのです。
4. 柔軟性を改善させるのは「ストレッチ」or「筋トレ」?
結論から言うと、どちらも効果があります。
筋トレをすると可動域が落ちるのでは…?という懸念の声が多く聞こえそうですが、
複数の研究結果で
- 筋トレは柔軟性を下げない
- 正しく行えば柔軟性は向上する
- エキセントリック重視が鍵
※逆に言えば、コンセントリック種目(クランチなど)ばかり実施すると、可動域(胸椎伸展)低下の懸念が…



「近年の研究では、フル可動域で行う筋力トレーニングは、ストレッチと同等、あるいはそれ以上に柔軟性を向上させることが示されています」
つまり、「ストレッチ」や「筋トレ」を正しく実施していくことで
パフォーマンス向上に繋げていくことができるのです!
5. 改善エクササイズ
それでは、ダンスの「足が上がらない・開かない」を改善するためのエクササイズを紹介していきます。
6. まとめ
骨盤の位置によって、ハムストリングスは
- 楽に使える状態
- 常に頑張らされる状態
どちらにもなり得ます。
足を高く上げるために必要なのは、
- 身体の使われ方を整えること
- 「動いても危険ではない」という再学習
- そのための適切なストレッチと筋トレ
です。
「長年同じ悩みを抱えている」
「努力しているのに変わらない」
そんなダンサーこそ、
筋肉ではなく“身体環境”という視点から一度見直してみてください♪



